●成人を迎えた地蔵尊

 6.平成14年8月22日(木) 地蔵盆の一席
  演題「成人を迎えた地蔵尊」布教師 住職(服部潤承)


 20回目の地蔵盆は、人で言うと成人でございます。早いもので、20年が経ちました。 皆様のお力添えにより、続けてまいることができ、大変感謝しております。
 以前、大阪の東住吉区にある豊運寺の本堂落慶法要のお手伝いに、寄せていただきました。 地上一階・地下一階の鉄筋コンクリートの本堂が堂々完成しました。 落慶法要の導師を務められましたのが、戸並東策老師でした。 戸並東策老師は、臨済の各僧堂・黄檗の禅堂に何十年にわたり、掛錫され、人生の大半を禅の修業に費やされたお師家様であります。 その戸並東策老師が、豊運寺の本堂落慶のお祝いの言葉をおっしゃった中に、非常に印象的な一件がありました。 それは、豊運寺の檀信徒に向かって、「人は死んだら、地獄(地国)に行く…。」と言う一件でした。
 かつて、梁の武帝が達磨大師に尋ねました「お寺や仏像をたくさん造ったが、その巧徳は。」と。 その問いに対して、達磨大師は、一言「無巧徳」と答えました。この問答とどことなく似かよっているように思いました。 仏像やお寺をたくさん造ると、当然巧徳があるのにきまっています。 しかし、「無巧徳」の達磨大師の答えは、意外です。 同じように、豊運寺の本堂が新築され、その新築に努力や協力されました檀信徒の皆さんは、当然亡くなったら、 極楽浄土に往生されるのにきまっています。ところが、意外や意外、「人は死んだら、地獄(地国)に行く」のお言葉に、 ビックリ・仰天したのは、私だけではないと思います。
 巧徳と無巧徳・極楽浄土と地獄(地国)のように、分別心を起こしますと、驚いたり、失望したりしますが、お悟りの智慧で、 「人は死んだら、地獄(地国)に行く」を、聞きますと、「ウン」と頷けるものであります。
 私達は、死にますと、火葬に伏されます。 すると、この肉体は、四大即ち、地・水・火・風に帰するものであります。 その中の一つ、地つまり大地に、この肉体の一部が帰って行くのであります。 この大地が地獄(地国)なのであります。
 いつごろからか、地獄には、閻魔大王が居ると言われるようになりました。 閻魔大王は、生前中の罪の軽重を量って、罪を償わせる裁判官だと言われています。 私も子供の頃、嘘をつくと、閻魔さんに舌を抜かれると、諭されたものであります。 つまり、閻魔さんは、地獄の大王なのであります。
 しかし、閻魔大王は、地蔵菩薩の化身とも言われています。
 以前、遠山の金さんと言うテレビ番組がありました。 遊び人の遠山の金さんは、市中をブラブラするヤクダ者です。 しかし、もう一つの顔は、罪人を裁くお奉行様であります。 つまり、南町奉行所の遠山金四郎左衛門尉であります。 金さんは、真実をしっかりと見て、金四郎左衛門尉として、正しく判定を下すのであります。
 スーパーマンと言うアメリカ映画がありました。 デイリープラネット社の新聞記者であったクラーク・ケントは、普通の社員を演じていますが、 一旦緩急があれば、スーツを脱いで、一早く現場に飛んで行き、困っている人を救うスーパーマンなのであります。
 この二人の人物、金さんと金四郎左衛門尉・クラークケントとスーパーマンを見ますと、 国こそ違いますが、共通点があります。 それは、同じ人物でありながら、二つの顔を持っていることと、困っている人を救うところにあります。
 地獄(地国)の閻魔大王は、地蔵菩薩だったのであります。 一人二役を務めているのがお地蔵さんであります。私達は死にますと、肉体の一部は、四大分離して、間違いなく、 大地に葬られます。言い換えれば、お地蔵さんのふところに抱かれると言ってよいかと思います。 地獄は地国、地の蔵のこと、それを象徴しているのが、お地蔵さんなのであります。
 また、お地蔵さんは、死んだら帰るところだけではありません。 地の蔵と書くように、命を生み、育てるところでもあります。 丁度大地に種を蒔くと、芽を出し、花を聞き、実を結ぶようにです。 このところが強調されて、お地蔵さんは、子供を守る仏さま・子供を育てる仏さまと、親しまれているのでありましょう。
 佛日寺の地蔵盆は、水子供養の地蔵盆でございます。
 流産は、大変悲しくて、辛いことでありましたが、乞われて・願われての妊娠でありましたので、 この水子は、成仏間違いないと確信いたします。
 しかし、乞われていない・願われていない妊娠で、中絶をした水子は、悲劇です。 あまりにも可哀相です。中絶された水子に、意志があれば、どんな気持ちでいるのでしょうか。 想像するに余りあるものがあります。
 今年は、20回目の地蔵盆ですが、中絶による水子が年々増加しているのと同時に、子供の虐待死が急増しています。
 いよいよ、閻魔さんの出番です。いやいやお地蔵さんの出番ではないかと思う今日この頃でございます。


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